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仙台高等裁判所 昭和52年(う)118号 判決

被告人 株式会社日立水沢製作所

金敏

主文

原判決を破棄する。

被告会社を罰金一〇万円に、被告人金を罰金五万円にそれぞれ処する。

被告人金が右罰金を完納することができないときは、金二五〇〇円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

理由

控訴趣意は検察官が提出した控訴趣意書に記載されているとおりであり、これに対する答弁は弁護人三島卓郎、同中村健が連名で提出した答弁書に記載されているとおりであるから、これらをいずれも引用する。

控訴趣意第一点について

所論は、原判決が被告人金の所為を包括一罪としたのは労働基準法六三条二項、一一九条一号、一二一条一項の解釈適用を誤つたものであり、その誤りが同被告人および被告会社に対する判決に影響を及ぼすことは明らかであつて、原判決は破棄を免れない旨主張する。

そこで、原審記録を調査検討し、所論の当否について判断すると、本件における事実関係は、原判決が罪となるべき事実として判示しているとおりであるが、このように使用者が満一八歳に満たない者を多数日にわたり衛生に有害な場所における業務に就かせた場合には、原則として、その就業日ごとに労働基準法六三条二項違反の罪が成立するものと解すべきであり、これらを包括して一罪とみるべきものではない。とすれば、本件被告人金の所為を全体として包括し一罪として処断した原判決は、労働基準法六三条二項、一一九条一号の解釈適用を誤つたものというべきであり、その誤りは、被告人金に対する判決に影響を及ぼすことが明らかであるのみならず、同被告人についての罪数を前提としてなされた被告会社に対する判決にも影響を及ぼすことが明らかというべきであるから、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。

そこで、控訴趣意第二点(量刑不当の主張)に対する判断を省略し、刑訴法三九七条一項、三八〇条により原判決を破棄し、同法四〇〇条但書によりさらに次のように判決する。

原判決が証拠により確定した罪となるべき事実に法令を適用すると、被告人金の所為は各年月日ごとにそれぞれ労働基準法一一九条一号、六三条二項、女子年少者労働基準規則八条三三号、罰金等臨時措置法四条一項に該当するので、所定刑中いずれも罰金刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条一項により各罰金の合算額の範囲内で、被告人金を罰金五万円に処する。同被告人が右罰金を完納することができないときは、刑法一八条により金二五〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。被告人金は被告会社の使用人であり、被告会社のために本件所為に及んだものであるから、労働基準法一二一条一項により、被告会社についても、労働基準法一一九条一号、六三条二号、女子年少者労働基準規則八条三三号、罰金等臨時措置法四条一項による罰金刑を科することにし、刑法四五条前段、四八条一項による各罰金の合算額の範囲内で、被告会社を罰金一〇万円に処する。

以上のとおりであるから、主文のように判決する。

(裁判長裁判官 中島卓児 裁判官 千葉裕 小田部米彦)

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